【石道寺】野菊のような観音さん
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大正時代にお引越し!
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※石道寺仁王門跡へ地元の方にご案内していただきました。
石道寺は元々、現在地から東へ1キロほど行ったところにありましたが、明治27(1894)年、仁王門が焼失、明治29(1896)年、大水で庫裡が流される災難が続き、無住となってしまいました。
そして大正3(1914)年に厨子を含め、仏像を現在の本堂へ引っ越し、安置しました。
また同時に、高尾寺の仏像も一堂に合祀し、今日まで石道(いしみち)の方々によってお守りされています。
お堂までの道のりが楽しい
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そんな石道寺へお参りする時、時間があれば石道会館に車を止め、案内看板に従い、歩いて観音堂へ向かいます。
車では見ることができない村の小道、小川の流れる音、土蔵、水路を泳ぐ魚。
ちょっとした探検気分で歩くと、だんだん観音さんがお住まいのお堂が見えてきます。
石道の方々が丁寧に手入れされている境内は、桜、紫陽花、紅葉と四季折々楽しめます。
些細なことでも、受け止めてくださりそうな観音さん
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心の中で「おじゃまします」を言って、堂内へ。
厨子に向かい正面に座って手を合わせる。
顔を上げると、優しい口元に微笑みが浮かんだ石道寺のご本尊十一面観音さんが。
一際目をひくのは、ふっくらとした唇の紅。
その表情をより近くから伺おうと立ち上がると、伏せた目は向き合う人の話に耳を傾け、優しく相槌を打つ真摯な表情。
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観音さんといえば、私たちにそっと差し出しているお手が気になるところ。
しなやかに曲がった右中指から、どんなものでも受け入れるような優しさを感じます。
体に強弱がなく、なで肩で、なだらかな体つき。
裳の緋色と、うすく残った肌の白色が色白の女性の姿をお借りになっているように見えます。
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「この観音さんは自然の光に、特に雪に反射した陽の光がお顔に当たるとほんまに綺麗な方やで」
と世話方さんは格子を開けてくださいました。
その瞬間、観音さんのお顔に陽が差して、触れたら柔らかく、温かそうな肌の色に。
伏し目は幼い子どもを見守り、ふと微笑んだ時のよう。
やっと歩けるようになった子どもと手を繋ぐ、若いお母さんのようにも見えます。
小さくも風格ある高尾寺のご本尊
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石道寺の本尊十一面観音さんの厨子のなかには、100cmほどの十一面観音さんがお二方いらっしゃいます。
そのうちご本尊にむかって、右手にいらっしゃるのは高尾寺のご本尊と伝わる十一面観音さんです。
あたたかい視線を送りながらも、つり目に鼻、唇が顔の中心に集まっている表情は西野薬師堂の十一面観音さんを思い出します。
条帛がきゅっと体を引き締めているところも、真ん中にいらっしゃるご本尊さんと違い、小さくも男性的で重厚感すら醸し出しているようにも感じられます。
観音さんを守るホトケさん
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※左:持国天、右:多聞天
厨子の両脇に立つ大きな持国天さんと多聞天さん。
胸と腰回りは大きく、お腹をギュッと絞り込み、腰をひねる。
観音さんをお守りすべく頼りになる存在です。
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その逞しさに反して、宝塔などをもつ手は小さく指も細く、優しさが感じられます。
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踏まれている邪鬼もあまりの迫力に震え上がっているようです。
それはまるで、必死に「ごめんなさい!ごめんなさい!」と言っているよう。
たくさんの方とご縁を結ぶ観音さん
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かつては鬱蒼とした森のなかにお住まいがあった観音さんたちも、今は村を見通せる場所で石道の方々と過ごされています。
土日になると、石道寺の観音さんのもとへ各地から足を運ぶ人が後を断ちません。
観音さんのお仕事も時代の流れに合わせて変化し、村を守ることにとどまらず、向き合う人すべてをふんわりと受け止めてくださるのでしょう。
心細くて、優しく受け止めて欲しいときは、石道寺の観音さんにお会いされてはいかがでしょう?
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※石道寺は写真撮影禁止です。取材にて特別に許可をいただき撮影、掲載しております。